コラム[cf.]
本が嫌い【cf.】
夏休みも終わりましたね。
ギリギリまで宿題に追われていた子供もいた事でしょう。
夏休みで思い出すのが読書感想文。これが大の苦手・・・。感想文=本ということで本を読むのも[苦手]になってしまいました。
事の発端は、小学校1年生の時に読書感想文コンクールで賞を取ったことから始まりました。それからというもの感想文となると母親つきっきりでのアドバイス!?添削?!・・・。もはや母の感想文かとツッコミたくなるような、本当に辛い夏休みの思い出です。
その後は小学4年生の時に書いた感想文(リンカーン)を5年生、6年生と写して提出し、中学校の3年間はマンガを読んで感想文を書くという荒技に。
しかし、今は図書館に通い何時間でもいられるぐらいの本好きになりました。子供だけは本嫌いになって欲しくないと読み聞かせをしているうちに本の[面白さ]に目覚めました。この面白さが子供の頃にわかっていれば・・・。
ちなみにうちの子は小学校から中学校まで、感想文の課題は選択制だった為に一度も書いた事がなく、本が嫌いにならなくて本当によかった。<N>
副業の申告は【所得税】
会社に勤めている方の中には、副業をされている方がいらっしゃいます。
この本業の給与所得と副業の申告については、法令の規定により【申告しなければならない】場合と【副業の経費が結構掛かってしまって赤字だから税金の還付のために申告したい】と考える場合の2つに大別することもできます。
そこで、このうち【申告したい】場合では【副業収入<副業経費=副業赤字】の状態であるため、この赤字を本業の給与所得と損益通算することで給与所得を圧縮し、税金の還付を目指すという方法がとられるのです。
ただし、そうシンプルにはいきません。特に【趣味が高じた】副業の場合は・・・。
今回は、副業は事業所得か雑所得かという【所得区分】について考えたいと思います。
まずその前提として、前述の損益通算のカラクリについて【雑所得は損益通算の対象にならない】という点を抑えておいて下さい。例えば、給与所得は500万円で、適正に計算されたとした雑所得が▲150万円だったとします。この場合、雑所得の▲150万円は損益通算の対象にならないことから他の所得に影響を与えず、給与所得は500万円のままとなります。そして、給与所得は年末調整で精算済みですから、結局、税金の還付には繋がりません。
だから【副業を事業所得と認識して申告をしたい】という発想になるのでしょう。
さて【所得区分】の判例は多くあるのですが、参考として2つご紹介します。
1つは【東京高等裁判所平成28年8月10日判決(棄却)(上告・上告受理申立て)】の猟銃等の製造に係る業務から生じた損失〔※1〕についてであり、もう1つは【大阪高等裁判所平成24年6月12日判決(棄却)(確定)】の服飾レンタルから生じた損失〔※2〕についてです。
これらは何れも本業が給与所得であり、副業の赤字を事業所得として申告していますが、結果として、何れの副業も雑所得と判断されています。当然、損益通算ができないことから税金の還付には繋がっていません。判断のポイントとしては、①本業において相当額の安定した収入を得ておりその収入が総所得の大部分を占めていること、②副業は本業の仕事のないとき、または本業の合間の僅かな時間で行っていたこと、③特定の取引先はない、または10人程度の知人を相手にしていること、④宣伝広告はなく自らが開設するブログを通じて依頼があれば受け付けている程度、または不特定多数を相手にするつもりはなかったため収益拡大の努力が全く行われていないこと・・・などを【総合的に判断】しています。どうやら【趣味が高じた】副業のようです。
ところで【副業の申告】に関する心配事と言えば、会社の兼業禁止規定を気にされていて、何とか【副業が会社に知られない方法】はないものかという話をよく聞きます。これは【確定申告書第二表の住民税・事業税に関する事項】における住民税の徴収方法を選択することで、特別徴収税額通知書のうえでは有効と思われます。そして、必ず【節税】は気になるものです。雑所得の必要経費はどこまで認められるのか・・・。
ただし、そもそも順番が逆と考えます。本来の順番は【必要経費の範囲】や【申告の仕方】などの[確定申告時期でもできる]判断が先ではなくて、
その副業収入は、事業所得か雑所得かという所得区分の判断を[業務開始の段階で認識している]ことが重要です。
あくまで所得区分の判断がスタートであり、その後に必要経費の精査をする流れとなります。この点、2つの判例では必要経費の範囲を争点にしていませんが、仮に【副業の経費が結構掛かってしまって赤字だから税金の還付のために事業所得として申告した】というのであれば、それはそもそも判断すべきタイミングが【遅すぎた】のかもしれません。
今はインターネット環境が当たり前に整備され、これに伴い業務の態様も様々であると言えることから、所得区分については、形式的ではなく全てが【個別に判断】すべきと考えます。
念のため【事業所得の判断基準】については最後にまとめてありますが、この判断基準の一部にしか当てはまらない場合もあり、総合的に判断すると事業所得になる場合もあります。そして、事業所得であれば青色申告を検討したり、青色申告であれば必要経費の精査にも力が入りますし、そもそも雑所得であればあんまり必要経費を頑張らなくてもいいでしょうし、もっとシンプルな申告になるでしょう。
これから副業を始めようと考えている方や、副業を始めて間もない方は、改めて【所得区分の判断】を忘れないようにして下さい。個人的には【業務開始の経緯】を特に気になる点と位置付けていますが、何れにしても、こうした準備ができていないまま確定申告時期になってしまうと、節税を意識してしまうことから、どうしても【偏った判断】になりがちです・・・。
所得区分の判断にあたっての事業所得の意義は次のとおりとなります。
【事業所得とは】自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性・有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得〔※3〕をいいます。また、
【具体的に特定の経済的活動により生じた所得が事業所得に該当するか否かについては】当該経済的活動の営利性、有償性の有無、継続性、反復性の有無のほか、自己の危険と計画による企画遂行性の有無、当該経済的行為に費やした精神的・肉体的労力の程度、人的・物的設備の有無、当該経済的行為をなす資金の調達方法、その者の職業・経歴・経験および社会的地位、生活状況および当該経済的活動をすることにより相当程度の期間安定した収益を得られる可能性が存するかどうか等の諸般の事情を総合的に検討して、社会通念に照らして判断すべきであるとされます。
<参考>所得税法第27条第1項、所得税法施行令第63条、所得税法第35条第1項、第69条第1項、TAINSコード:Z888-2100〔※1〕、税務訴訟資料第262号-117(順号11967)、税務訴訟資料第261号-245(順号11835)〔※2〕、最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決・民集35巻3号672頁参照〔※3〕
3年以内の贈与はありません【相続税】
被相続人は、10年以上も積み立てをしていました。
【必要なお金は用意してあるからな・・・】という気持ちを込めてでしょうか、孫ら名義の通帳を作って、新たに印鑑も用意して、将来訪れるだろう出費に備えていたようです。そして、実際に孫らの入学や結婚などのライフイベントの度に、その預金から引き出して負担していたようです。手続きをしたのも、通帳と印鑑の管理をしていたのも、被相続人でした。また、預金の引き出しについても、被相続人が自らまたは使者(=孫らの母親)に指示して実行されていたとのことです。相続開始の5年程前にすでに積み立ては止めていたようですが、この孫ら名義の預金は1,000万円を超える残高となっていました。
相続税の申告事案の受任にあたっては、相続人に対して聞き取りをしますが、
【Q1.相続開始前3年以内の贈与はありませんでしたか】と質問してみたところ、
【A1.3年以内の贈与はありません】との回答がありました・・・。
これは、相続税法第19条による【生前贈与加算】の規定になりますが、最近の相続税に対する関心の高さからみても、3年以内なら相続財産に【加算される】ことや、3年以内の贈与があったとしても、相続または遺贈により財産を取得していなかったら【加算の必要はない】ことなどは、理解されているようです。それでは、少し言葉を変えて質問をしてみます。
【Q2.相続開始前の資金移動はありませんでしたか】
Q1.と違い、3年以内という【期間】もなく、敢えて【贈与】という単語も使っていませんが、得られる回答はQ1.と同じでしょうか・・・。
ところで、贈与とは、民法第549条に規定されていますが、簡単に言うと【お前にやるよ】に対して【有難う】で成立する諾成契約をいいます。そして、相続で気をつけなければならない【名義預金】問題。前述の事案はまさに名義預金が関係しますが、名義預金とは、被相続人名義ではなく子や孫など親族の名義となっている場合であっても、その預金の形成や管理・運用からみて被相続人に帰属するとされる預金をいいます。
そこで、19条の確認のやり取りで勘違いしてもらいたくない点が2つあります。
1つは、聞き取りをする我々の立場において【3年以内の贈与がないことの回答】を得たからといって【相続財産として認識すべき財産がないことを確認した】ことにはならないということであり、もう1つは、相続人の立場において【資金を移動しただけ】では贈与が済んでいることには【当然にならない】ということです。
そもそも【贈与が済んでいなければ、期間や19条の規定の当否に関係なく相続財産となる】可能性はあるのです。
この事案では、前述の経緯のほか、孫ら名義の預金は被相続人の預金を原資として形成されていること、孫ら名義の預金の存在は他の親族に知られていたにもかかわらず、孫らはそれぞれの名義の預金について残高を把握していないことなど・・・、孫らは受贈者として預金の使用収益権を確保していたとは認めることができませんでした。結果【孫ら名義の預金は被相続人に帰属している=相続財産】と判断しています。
この点、相続人としては、被相続人の名義になっていない預金なので相続財産には含まれないと思っても仕方ありませんし、また、単に3年以内の贈与の存否を確認されたと理解しているため【(自分では贈与と思っている)資金移動は5年前だから・・・】と、A1.の回答をされたとしても無理はありません。まさか【資金の移動があったのに、贈与が済んでいないことがある】とは考えてもみなかったでしょう。
さて、相続税の課税の場面においては、相続開始時の現況または目に見えるものの確認は特別な作業ではないのですが、申告漏れがないように【見つけ出すという意識での聞き取り方】も工夫が必要と考えます。
この事案は、生前対策ではなく孫らのために貯金をしていたというごく自然な行動が招いてしまった結果ですが、もし相続税の節税対策として生前贈与をされるのであれば、
3年以内かどうかという[贈与をするタイミング]を意識するのではなく、
その資金移動は贈与が済んでいるかという[贈与の確実性]を第一に考えるべきでしょう。
なお、この事案では、受任にあたり過去10年分の預金取引履歴を確認しましたので、名義預金の存在に気づき、総合的な判断のもと申告漏れにはならずに済みました・・・。
<参考>相続税法第1条の3、第19条、民法第549条、550条
誰が建てたアパートか【財産評価】
相続税の節税対策としての生前贈与でよくある事例です。
【問い】A土地は父の所有ですが、その上のB貸家は長男の所有であり、第三者丙に貸し付けられています。長男は父からA土地を無償(=使用貸借)で借り受けていた状況で父の相続が開始したとき、A土地についてはどのように評価するのでしょうか。
【答え】使用貸借のため、自用地として評価します。
・・・相続税の課税価格に算入されるA土地の評価額についての問題になりますが、土地の使用貸借に係る使用権はゼロとして扱われるため、一見、適正な評価に見えます。では、貸家の敷地の用に供されていることから、貸家建付地としての評価はできないのでしょうか。
さて、相続開始時点で【問い】のような利用状況になるパターンとして2つ考えられます。
①父からA土地を使用貸借のうえ【長男がB貸家を建てて】丙に賃貸した場合と、
②【父がB貸家を建てて】丙に賃貸し、その後、長男にB貸家を贈与した場合です。
ところで【相続開始時点】の利用状況が同じであれば、評価方法も一緒で①と②に差異はない筈ですが、このような事例では評価額が異なります。①は自用地として、②は貸家建付地として、それぞれ評価することになります。
これは、①の経緯があったのであれば【相続開始時点】の利用状況から見ても【答え】のような一般的な回答となりますが、②のように自用地評価とはならない理由としては【建物の所有者に異動があった場合でも、異動前に父と丙との間で締結された、建物賃貸借契約による建物賃借人である丙の敷地利用権の機能には変動がない】と考えられることから、貸家建付地での評価となるのです。
ただし注意しなければならない点が1つあります。貸家建付地として評価できるのは、あくまで【建物贈与時点】と【建物贈与者の相続開始時点】の建物賃借人(丙)が同一である場合に限られます。そのため、長男が相続開始時点で新たな賃貸借契約を締結している(=従来の丙から新たな建物賃借人甲への変更があった)場合は、自用地で評価しなければなりません。この点、戸建の貸家のほか、サブリースによりアパートを不動産管理会社に一括して貸し付けている場合は、各部屋の居住者ではなく不動産管理会社が建物賃借人となるため、貸家建付地としての評価はスムーズでしょう。
何れにしても、財産評価の場面においては、
相続開始[時点の現況だけ]で判断するのではなく、
誰が建てた建物かなどの[過去の異動]も確認することが重要となります。
ところで、
【問い2】上記【問い】の利用状況(過去の異動は②)で、父が生前にA土地を妻に贈与することとした場合、妻が取得したA土地はどのように評価(=贈与税の課税価格)するのでしょうか。贈与後は、B貸家の所有者である長男は、A土地をその所有者である妻(=長男の母)から使用貸借により借り受けます。
【答え2】貸家建付地として評価します。
・・・上記の【問い】を【相続】ではなく【贈与】に置き換えたパターンです。考え方は前述と同様ですが、建物賃借人の変更を想定する必要がない分、贈与パターンの方が理解し易いかもしれません。念のため、妻がA土地を贈与により取得した【後の】利用状況が使用貸借だからといって、自用地評価とはしないように気をつけましょう。
<参考>相続税法第22条、財産評価基本通達26、相続税個別通達(昭和48年11月1日付直資2-189使用貸借通達)
寄附をするとご主人の税金が戻ってくる【所得税】
確定申告時期になると多いのが、ご主人に代わって奥様が手続きをされる場合です。
今回は、寄附金控除について考えたいと思います。
実際、寄附金控除の適用が可能かどうかを判断するため、ご主人の源泉徴収票と受領証等の有無を確認し、手続きの流れと大凡の還付額をお伝えする段階で、念のため【受領証の名前は何方ですか】と聞くと【私の名前です】ということがあります。改めて確認すると、手続きの過程であまり気にすることなく奥様の名前で色々と済ませたとのこと・・・。そうすると、奥様が専業主婦であったり、扶養控除内の給与収入のみであったときは奥様の税金は還付されませんし、そもそもの目的であったご主人の税金も還付されません。このような相談は本当に気の毒です。
さて、寄附金控除は所得控除の一つですが、所得控除も様々で、誰のものを払ったかによって取り扱いが異なります。本人に係るものか、親族に係るものも含まれるかの別です。
この点、医療費控除や生命保険料控除などは【親族タイプ】であり、小規模企業共済等掛金控除は【本人タイプ】となります。そして、寄附金控除も【本人タイプ】のため、
本人に係るもの[を払った本人に限り]控除できる取り扱いとなり、
親族に係るもの[も含めて控除できる]わけではありません。
この手の手続きを奥様が代わってすることは珍しくないのですが、もしかしたら夫婦だからといって余り深く考えていなかったり、もしかしたら単に認識不足であったり、何れにしてもあまり慣れていない方にとっては本当に残念といえます。ちょっとしたことですが、万が一手続きに不備があった場合は、折角の寄附について何ら税金の還付には繋がりませんので注意しましょう。
では、このような場合の救済措置は一切ないのか・・・。
原則はないのですが、ご主人の寄附金控除が認められた裁決事例があります。この事例は【すんなりと認められた】わけではないのですが、その寄附金を誰が払ったかの判断について、
受領証の[名前が誰になっているか]という形式面ではなく、
その後のご主人の対応を含めて、実際に[誰のお金で払ったか]という実質面が決め手となりました。
ご自身の中で【本当はご主人が寄附したものに間違いない】のに、手続き上のミスで【奥様が払ったことになっている】ため、ご主人の寄附金控除が適用できなかったということはないでしょうか。勿論、寄附先やその目的と個々の経緯を考慮した場合には【事例のように認められる】とは限りませんが、一つの参考になるかもしれません。
なお、様々な課税の場面では、形式的な判断と実質的な判断が登場します。そして実質的な判断が全てであるところ、その後のトラブルを回避するためには、出発点ともいえる形式的な手続き面での不備がないことも重要と言えます。
<参考>所得税法第78条、第120条第3項第1号、所得税法施行令第262条第1項第7号、平成25年7月30日公表裁決