コラム[cf.]
寄附をするとご主人の税金が戻ってくる【所得税】
確定申告時期になると多いのが、ご主人に代わって奥様が手続きをされる場合です。
今回は、寄附金控除について考えたいと思います。
実際、寄附金控除の適用が可能かどうかを判断するため、ご主人の源泉徴収票と受領証等の有無を確認し、手続きの流れと大凡の還付額をお伝えする段階で、念のため【受領証の名前は何方ですか】と聞くと【私の名前です】ということがあります。改めて確認すると、手続きの過程であまり気にすることなく奥様の名前で色々と済ませたとのこと・・・。そうすると、奥様が専業主婦であったり、扶養控除内の給与収入のみであったときは奥様の税金は還付されませんし、そもそもの目的であったご主人の税金も還付されません。このような相談は本当に気の毒です。
さて、寄附金控除は所得控除の一つですが、所得控除も様々で、誰のものを払ったかによって取り扱いが異なります。本人に係るものか、親族に係るものも含まれるかの別です。
この点、医療費控除や生命保険料控除などは【親族タイプ】であり、小規模企業共済等掛金控除は【本人タイプ】となります。そして、寄附金控除も【本人タイプ】のため、
本人に係るもの[を払った本人に限り]控除できる取り扱いとなり、
親族に係るもの[も含めて控除できる]わけではありません。
この手の手続きを奥様が代わってすることは珍しくないのですが、もしかしたら夫婦だからといって余り深く考えていなかったり、もしかしたら単に認識不足であったり、何れにしてもあまり慣れていない方にとっては本当に残念といえます。ちょっとしたことですが、万が一手続きに不備があった場合は、折角の寄附について何ら税金の還付には繋がりませんので注意しましょう。
では、このような場合の救済措置は一切ないのか・・・。
原則はないのですが、ご主人の寄附金控除が認められた裁決事例があります。この事例は【すんなりと認められた】わけではないのですが、その寄附金を誰が払ったかの判断について、
受領証の[名前が誰になっているか]という形式面ではなく、
その後のご主人の対応を含めて、実際に[誰のお金で払ったか]という実質面が決め手となりました。
ご自身の中で【本当はご主人が寄附したものに間違いない】のに、手続き上のミスで【奥様が払ったことになっている】ため、ご主人の寄附金控除が適用できなかったということはないでしょうか。勿論、寄附先やその目的と個々の経緯を考慮した場合には【事例のように認められる】とは限りませんが、一つの参考になるかもしれません。
なお、様々な課税の場面では、形式的な判断と実質的な判断が登場します。そして実質的な判断が全てであるところ、その後のトラブルを回避するためには、出発点ともいえる形式的な手続き面での不備がないことも重要と言えます。
<参考>所得税法第78条、第120条第3項第1号、所得税法施行令第262条第1項第7号、平成25年7月30日公表裁決