コラム[cf.]

2019-07-30 21:46:00

預金移動調査のきっかけは【相続税】

平成24年5月15日公表裁決の【判断】の一部抜粋です。
【~中略~家族の主たる収入を支える世帯主等が病気などによって長期入院を強いられる状況に置かれた場合、生活を共にする配偶者等の家族が入院費や生活費等の支払に備えるため、世帯主等が貯蓄していた預貯金や保険契約などを解約し、手元に現金を確保しておくことは一般的に見られる行動であり~中略~本件配偶者は、本件被相続人の入院費や生活費等の支払のため、本件被相続人の了解の下、本件養老保険を解約し、本件被相続人の通常貯金口座に入金した1,000万円をその支払に充てるとともに、残額である本件金員を急な支払に備えて~中略~本件配偶者名義の通常貯金口座に入金したものと認められることから、本件金員は、本件配偶者が本件相続開始日において本件被相続人から預かっていたものであり、本件被相続人の相続財産であると認めるのが相当である】

請求人(相続人)は【本件金員は、本件相続開始日に存在しない財産であるから、請求人が相続により取得する本件被相続人の財産には含まれない】と主張しましたが、結果、相続財産と判断されました。所謂【名義預金】についてですが、この裁決で名義預金とされた金額(本件金員)は、11,623,072円です。
名義預金の構成に至った経緯が[意図的であるかないか]にかかわらず、
そして、被相続人の世代では[当たり前のように見られる資金移動であったとしても]名義預金との判断を免れる理由にはなりません。
この点、相続税の申告にあたっては【相続開始日現在】という考え方は外せないところ、名義預金を探るには、被相続人名義の残高証明書を取得しただけでは足りません。被相続人とその家族名義の預金の動きを見るしかないのです。

過去の預金の動きを検証する作業を預金移動調査といいますが、東京国税局のHPで公表されている【税理士法第33条の2の書面添付に係るチェックシート〔相続税〕(令和元年5月以降用)】でも【預貯金や現金などの増減について、相続開始前5年間程度の期間における入出金の使途等を確認していますか】というチェック項目があるくらい、預金移動調査の必要性を発信しています。
なお、書面添付制度についての詳細は割愛しますが、かなりザックリ言えば【税務調査対策】と認識されているようです。

そもそも相続人が、被相続人の財産を把握しているとは限りません。特に、別居しているような場合は、相続が発生して財産がどれくらいあったのか初めて知って、こんなにあったのかと改めて驚いて・・・。ネットで色々調べてみたら、相続税もかかるみたいで・・・。兎に角、様々な手続きを片づけなければならないことは分かったけど、結局のところ税金のことはよく分からなくて・・・と相談されれば、タンス預金とか生活費余剰金という単語を使って名義預金について説明し、預金移動調査を提案するのですが、意外と【うちはそういうのはないなあ】とか【そんなことまでやらなきゃならないんですか】という返答があったり、余り興味がない様子。よく分からないと言うのであれば、預金移動調査を望まないと言い切れる筈はないと感じ、ここまでくると【提案】ではなく【説得】に近いのかもしれません。

また、前述の書面添付制度に関連させるならば『別途、税理士報酬は発生しますが、預金移動調査をご依頼頂くと、税務調査の可能性が軽減する書面添付制度を活用できます』のような誘い文句もあるようですが、さて、預金移動調査は税務調査対策でやるものだったろうか。遺産分割の対象とされる名義預金の検証もせずに相続税の申告書が完成する筈はないだろうに、相続財産を把握するために欠かせない作業と思っていたのに・・・。
この点も、きっかけはどうであれ、その必要性が浸透するのであれば結果オーライと思うことにして、一層の事、誰か【相続税の申告において預金移動調査は必須です】と決めてくれると助かります。名義預金に限らず、贈与の検証にも繋がることだし

<参考>平成24年5月15日公表裁決、税理士法第33条の2の書面添付に係るチェックシート〔相続税〕(令和元年5月以降用)(東京国税局HP:税に関する情報)

2019-07-10 21:34:00

8%とか10%とか【消費税】

消費税が10%にアップするまであと少し。
あれだけの【振り】があった分、準備期間としてはかなり長かったと思いますが、レジの準備、各種補助金のことや販売・会計システムの整備、キャッシュレス決済のことなど、この大改革は様々な場面に影響を及ぼしてきました。
更に、取引の現場に加え、消費税の申告書を作成する際に気をつけなければならない売上税額や仕入税額の計算、インボイスのことを考えると、まだまだやらなければいけないことは沢山あり、税理士にとっては消費税への【接し方】が大きく変わるように思われます。
そんな中、改正消費税の研修会は色々開催されているのですが、先日、私も受講してきました。
何となく、8%(=軽減税率)の対象となる取引はどういったものか、10%(=標準税率)とされる取引との区別はどうか、などがテーマと予想しながら受講したのですが、印象に残った部分は【価格表示】の考え方でした。

例えば、出前もやる飲食店で、かつ丼を税抜価格(=本体価格)800円で提供する場合に、今どきの模範解答に当てはめるとすると、
【店内飲食】であれば、標準税率10%適用のため、税込価格(=支払金額)は880円(このうち消費税相当額は80円)となり、【出前】であれば、軽減税率8%適用のため、税込価格(=支払金額)は864円(このうち消費税相当額は64円)となるでしょう。
ただし、講師は【何でだね?】・・・と。出前の方が人件費や配達のガソリン代がかかるのに貰う金額は少ないって【おかしくないかい?】・・・と。

あくまでも、8%と10%の区別は対象品目の視点から見た区別であり、常に2種類の支払金額を意識する必要があります。他方、価格設定は任意であるという視点で、前述のかつ丼を店内飲食と出前に関係なく、税込価格(=支払金額)880円で統一して提供するとした場合は、常に1つの支払金額を意識するだけでいいので、
【店内飲食】の税抜価格(=本体価格)は、標準税率適用のため800円(消費税相当額は+80円)であり、【出前】の税抜価格(=本体価格)は、軽減税率適用のため815円(消費税相当額は+65円)であって、税抜価格(=本体価格)に差が生じることになるものの、とにかく880円を支払えばいい。とてもスッキリしています。勘違いしそうですが、今回の軽減税率導入にあたっては、
[軽減税率対象品目(=8%適用するもの)と、それ以外(=10%適用するもの)の使い分けは必要]ですが、これらの
[税抜価格(=本体価格)を同一にする必要はない]のです。
所謂、価格表示の考え方で、実質は、出前を店内飲食に見合うよう値上げしたかたちになります。
当然、税込価格(=支払金額)を統一するには、税抜価格(=本体価格)を同一にせず差を設けた合理的な理由が必要と指針では示していますが、講師の問いかけ同様、通常の理由であれば理解できる範囲内と思われます。
また、税込価格(=支払金額)を統一することで8%と10%を区別することなくどちらか一方の税率で集計し申告、納税をしていいということにもならないので、全部解決という訳にはいきませんが、この点も、レジ設定や販売・会計システムの設定次第で十分カバーできるように思われ、丁度、税理士がお手伝いできる領域と考えています。

軽減税率導入の背景に【低所得者への配慮】というキーワードがあります。
仮に、税込価格(=支払金額)を統一した場合は、値段が高く感じられるとか、損をしたように感じられるという意見など、表面上のメリット、デメリットも気にはなりますが、何れにしても【できるだけ安く】という気持ちを持ちつつ【妥当な金額】の感覚は忘れないようにしていきたいものです。
余談ですが、この講師はパソコンを購入する際に、税抜表示のB店よりも、税込表示のY店から購入するとのことで、多少高くなったとしても、最終的に支払う金額がハッキリしているY店を選ぶという拘りがあるそうです。これも支払う側の気持ち一つ、潔い

<参考>消費税法第63条、消費税転嫁対策特別措置法第10条1項、消費税の軽減税率制度の実施に伴う価格表示について(平成30年5月18日:消費者庁・財務省・経済産業省・中小企業庁)

2019-07-01 21:30:00

過剰なサービスはいりません【cf.】

年1回の申告のみを依頼する場合の報酬を聞きたかったようです。
『売上高は年間〇万円、従業員は〇人、帳簿は自分で作成します。所謂、過剰なサービスはいらないので、その場合の報酬はいくらですか?』

問い合わせは自由ですが、過剰なサービスの定義が分かりません。その勢いのまま申告書まで作っちゃえばいいのにと思ってしまうくらい一方的で、マナーの欠いた電話でした。
この他にも【忙しくて税理士と喋っている時間がない】とか【赤字だからアドバイスはいらない】とか【会計ソフトを使っているから分からないことは解決できている】など様々あり、報酬を抑えたいがためなのか、税務判断に必要な資料の取得費用を渋ったり、聴き取りの時間を削るという話も聞きます。残念なことです。

本日、2019年(令和1年)7月1日(月)より、事務所のホームページを移転し、あわせて、税金と会計のコラム[cf.]はアメブロでの発信としました。
丁度1年位前からこれまでの事務所のホームページに違和感をもっていて、直ぐに公開内容を編集・更新したかったのですが、私達にとって平成30年という年は、様々な人の言動に振り回されて、放っておくことができない状況が続いて、納得がいかなくても決断しないといけないことが多くて、優先順位を考えると中々身動きの取れない1年で・・・。
ようやく実現することができた今、改めて、私の経営理念である【人】【現場第一】【適正であること】を考えると、
ある方にとっては[過剰なサービスと感じる]ことかもしれませんが、
[欠かせない費用や時間もあること]をしっかりと伝えていかなければなりません。

やるべきことを最大限尽くすことが、目の前の相談者、経営者、納税者にとって適正な税務判断に繋がると信じて、これからも、話を聴くところから始めようと思います

2017-12-31 21:27:00

夢占い【cf.】

ここ最近【夢占い】がマイブームです。
ブームと言っても、毎朝起きたらすぐに寝ている間に見た夢の内容をインターネットで【〇〇 夢占い】と検索するくらいの密かなマイブームです。
この夢占いブームが私の中で巻き起こったきっかけは、私が【自分が死ぬ夢】を見た事でした。自分が死ぬ夢はやはり気持ちが悪く、そして強烈なインパクトを残したため、目が覚めてからすぐに【自分が死ぬ夢 夢占い】とインターネットで検索をかけたのです。
結果は驚くべきものでした。夢占いのサイトには【自分が生まれ変わる】【自分が死ぬ夢は良い夢!?】といったポジティブな言葉であふれていたのです。
さすがにそんな事は無いだろうと疑っていたのですが、その日、ちょっとだけ良い事が起こりました。今思えば私も結構単純だったなと思うのですが、とにかく、夢占いのサイトに書かれていた通り良い事が起こったため、その時から私は夢占いがマイブームとなり、朝起きたら寝てる時見た夢を占う事が日課となりました。
自分が[悪夢]を見たと思っても夢占いの観点から見るとそれは[吉夢]であったり、逆に良い夢を見たと思って調べてみたら不幸を暗示する夢であったりという何とも言えない不思議さが夢占いの魅力であると私は考えています。皆さんも、ぜひ一度【〇〇 夢占い】で検索してみてはいかがでしょうか。<J>

2017-12-15 21:16:00

1日12時間くらい仕事をしている【所得税】

【Q.個人事業主として、借家の一室で仕事をしていますが、毎日12時間くらいは仕事をしています。支払っている家賃の50%を経費にできますか】
という質問を受けたことがあります。確かに、1日の半分を仕事に費やしたので、払っている家賃も半分が経費という発想であり、とてもシンプルで分かり易いところです。
この点、所得税法ではプライベートな支出を家事上の経費(=家事費といい、衣服費、食費、住居費、娯楽費、教養費等の個人の消費生活上の費用が該当)として区分し、そもそも、必要経費の算入を認めていません。また、前述のように、プライベートな部分と業務用の部分の混在する支出を家事上の経費に関連する経費(=家事関連費)として区分したうえで、必要経費への算入の取り扱いを次のように規定しています。

【所得税法施行令第96条:家事関連費】
所得税法第45条第1項第1号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。
(1)家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費
(2)前号に掲げるもののほか、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分の金額に相当する経費

言い回しとして、上記(1)と(2)の経費を、
必要経費に[算入される経費]として限定するのではなく、
必要経費と[されない家事関連費には含まれない経費]としてピックアップしている点に、
特徴があります。結果としては、必要経費とされない家事関連費には含まれない=必要経費に算入される部分と解釈できるのですが、東京地裁平成25年10月17日判決〔※1〕を参考にしてみようと思います。

この判決は、3LDKの2階建て住宅の総面積のうち、保険代理店等の事業用として使用している部分の面積(=事業専用割合)は60%であるとして、月額賃料の60%を必要経費に算入して申告した事案です。
納税者側は、リビング、ダイニングキッチン(シンクを除く部分)、洗面、1階のトイレ、2階の洋室1室を、業務専用スペースとして常時使用していた旨主張しました。また【毎日、会議や食事会、パーティーミーティングのために使用しているから、時間的にも家族団らんの場所として使用することは不可能】とか【リビングルームは、ビジネス専用の集会場であり、あくまでもリビングルームに見立てた部屋である】とも主張しました。
これに対し【~建物の構造上、住宅の一部について、居住用と事業用とを明確に区分することができる状態にないことが明らか~業務専用スペースとして常時使用し、それ以外の用向きには使用していなかったとは考えられず、むしろ、家族と共に家族生活を営みつつ、業務を行っていたものと認めるのが相当】であるとして、必要経費の算入は認められませんでした。
そして、家事関連費を業務の遂行上の必要性があるというためには【その支出が業務の遂行との間に何らかの関連性があるというのみでは足りず、また、単に事業主が主観的に必要であると判断することだけでなく、その必要性が客観的にみて相当であることを要する】としています。確かに、施行令第96条の言い回しが、OKな経費ではなく、ダメな経費には含まれない経費の列挙というあえて分かり辛い表現からも、家事関連費の必要経費算入の取り扱いは【必要性】と【明らかな部分】を求めていると言えます。

さて、前述の質問を受けたのはこの判決と出会う前で、事業専用割合は【時間】ではなく【面積按分】が妥当という回答をしました。これは、現行の判断でも一番身近な割合ですが、それにしても、洗面所もトイレもキッチンも・・・って、どれだけ【攻めた】申告なんだと。
確かに、家事関連費の判断は、簡単に考えてはいけなくて、ハッキリ言って面倒くさくて【何で】の多い取り扱いです。そして、現行の取り扱いが【適正な申告にとって】万能とは言えない点も否定できません。この事案でも、面積按分することの【方向性】は間違っていなかったでしょうに、それ以上の判断で【主張すべき部分】と【引くべき部分】の強弱を間違えたように思われます。これが、もっと説得力のある事業専用割合であれば、攻めた申告ではなく、適正な申告に近づいたのかもしれません。まずは、関与先への聞き取りから始めよう。

<参考>所得税法第37条、45条、所得税法施行令第96条、税務訴訟資料第263号-187(順号12311)〔※1〕

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