コラム[cf.]

2019-08-10 21:51:00

処分に困る土地【終活】

『親から相続した実家にある土地や山林とか、正直、場所はハッキリしません。自分にとっては必要でなく、今後実家で暮らすことはないし、特に愛着もありません。何とかしたいのですが、売れそうにもないので秘策を考えたんです。自分の財産は生前に子供達に贈与しておいて、処分に困る土地だけ残す。子供達に相続放棄をさせれば、その土地は国のものになる。いい考えだと思いませんか』

・・・と、相談を受けたとします。
結構自信たっぷりに言われてしまうと返答に困ってしまいますが、なるほどと相槌を打って、さりげなく話題を変えるか。それとも、そのまま同調して盛り上がった方が無難でしょうか。
相続は[引き継がれるもの]ですが、
[引き継がせないようにする]ために生前から整理しておくことも重要です。

財務省HP内の財政制度等審議会・国有財産分科会の答申・報告書等に掲載の【今後の国有財産の管理処分のあり方について-国有財産の最適利用に向けて-(答申)PDF】の中で、相続人不存在の場合における清算後の残余財産の国庫帰属についての記述があります。
その記述によると、相続放棄申述受理件数や国庫帰属財産額は年々増加傾向とのこと。そもそも、相続人不存在の場合における国庫帰属は、利害関係人等からの申立がなければ始まらないところ、その申立すらなく相続人不存在の不動産がそのまま放置される状況(=所有者不明土地)をどうにかしたい。この対策として【国との死因贈与契約等により不動産の遺贈を受ける仕組みを設けるべきである】とし、国としては、死因贈与契約等を締結することで、利害関係人として手続きの当事者になる狙いがあるようです。
ただ、無条件に国庫に帰属させればいいという訳ではありません。当然、契約の段階で、年齢や個別事情、相続人となることが見込まれる者の有無、資産状況や土地の管理状況など、把握と管理のために慎重な対応になるようです。
さて、処分に困る土地を引き継がせないようにするための最終的な手続きを次世代に残す前述の秘策は、今後、この答申に当てはまるのでしょうか。

そう言えば、私が相続税法に合格した平成13年の税理士試験問題は、特別縁故者に関する相続税法の規定についてでした。
我々は税法の専門家であるため、相続人が不存在のケースについては、国庫に帰属する前に特別縁故者に対する財産分与がされた場合の相続税の課税関係を主に学ぶのですが、スタートである相続放棄の申述手続きはできませんし、相続人不存在の現状や相続放棄の適否について議論できるほどの学び方は中々しません。
残念ながら、前述の秘策のような話をされた場合、専門家の領域の違いによって返答に差が出てきてしまうのかもしれませんが、何もかも法律にガチガチに当てはめる必要はありません。相続の当事者になったとして考えてみようと思います。
『・・・どのような場面であれ、親である貴方が面倒と感じることは、同じく、子供達にとっても面倒でしょう。親の世代で解決して、子供達に煩わしいことを残すべきではありません・・・』
今後の動向が気になります

<参考>民法第554条、938条~940条、951条~959条