コラム[cf.]

2017-10-13 15:42:00

併用住宅と支払利息【所得税】

店舗兼自宅、事務所兼自宅などで個人事業を営まれている方について、併用住宅に関する【できる規定】を確認したいと思います。
事例として【床面積をもとに算出した比率は、9%が事務所用(=居住の用以外の用=事業の用と表現)で、91%が居住の用である併用住宅をローンで新築した】ものとしますが、ローンのうち、事業の用に供する部分の取扱いはどうなるのでしょうか・・・。

1つ目は【住宅借入金等特別控除】の取扱いです。
住宅借入金等特別控除の対象となる家屋は、居住の用に供する家屋で一定の要件を満たすものとされており、このうち、事業の用に供する部分がある場合は、その部分を除いた居住の用に供する部分の床面積に占める割合によることとなりますが、事例では、91%が住宅借入金等特別控除の対象となり、残りの9%は控除の対象となりません。
2つ目は【支払利息の必要経費算入】の取扱いです。
事例では、事業の用部分は9%ですから、仮にローン全体の年間支払利息が20万円だったとすると、1.8万円を必要経費に算入することができることになります。
結果、ローン全体でみれば、年末残高の91%部分を住宅借入金等特別控除の対象とし、その年中に支払った利息の9%部分を必要経費算入の対象とするのが、原則となります。

ところで、住宅借入金等特別控除の取扱いには、前述の原則に対する特例として、併用住宅に関する【90%のできる規定】があります。
これは、居住の用に供する部分と居住用以外の用に供する部分を床面積の比により計算した場合に、居住の用に供する部分の割合が【概ね90%以上】に相当するときは、原則にかかわらず【家屋の全体を居住の用に供しているものとする】ことができる規定ですが、居住の用部分と事業の用部分を【厳密に区分】するのではなく、事業の用部分が小さいのであれば、家屋全体を居住の用として取り扱うことができるという、課税実務上の配慮と言えます。
事例では、事業の用に供する部分を含めた100%を住宅借入金等特別控除の対象として【選択】することができます。
ただし、この【90%のできる規定】を選択して、家屋全体を住宅借入金等特別控除の適用対象とした場合には、9%部分(1.8万円)の支払利息を必要経費に算入することができなくなってしまうので注意が必要です。
この点、できる規定を選択して住宅借入金等特別控除の【適用を受けている年分】は、居住の用以外の用部分は全くないものとして扱われるため、必要経費【も】というような重複適用はできませんが、できる規定を選択して住宅借入金等特別控除の【適用を受けた年分後】は、住宅借入金等特別控除の適用期間は終わってしまい、できる規定を選択する余地はなくなったため、引き続き事業の用に供しているのであれば、その部分の必要経費の算入は可能という考え方によります。

そうすると、併用住宅のローンに関する取扱いのうち、
[住宅借入金等特別控除の視点]からみた選択肢としては、
①原則どおり、91%部分を住宅借入金等特別控除の対象とするか、②家屋全体100%を住宅借入金等特別控除の適用対象として選択することが考えられます。また、
[必要経費算入の視点]からみた選択肢としては、
③前述①に対応させるためできる規定を選択せず、原則どおり、事業の用に供している9%部分を必要経費に算入するか、④前述②に対応させるためできる規定を選択して、住宅借入金等特別控除の適用が終わった年後は、原則どおり、事業の用に供している9%部分を必要経費に算入することが考えられます。
僅か10%の問題かもしれませんが、ご自身にとっての節税効果を最大限発揮させるにはどのように選択すべきでしょうか。十分ご検討下さい。

さて、居住用財産を譲渡した場合の居住部分の判定や、特定の事業用資産の買換えの場合の事業用部分の判定にも90%のできる規定があり、また、他の税目でも、様々なできる規定というものはあります。
何れにしても【得をした感じを与えてしまう】できる規定ですが、1つのできる規定を選択することで、他の【節税要素が機能しない】場合がある点はご注意下さい。できる規定【だけに注目】して、あれもできる、これもできると、拡大解釈をしませんように・・・。

<参考>所得税法第45条、租税特別措置法第41条、租税特別措置法施行令第26条第6項第1号、第2号、租税特別措置法(所得税関係)通達41-27、租税特別措置法(所得税関係)通達41-29