コラム[cf.]
多くなりすぎた開業費【所得税】
市販会計ソフトの普及は、あまり簿記の知識に自信はないけれども起業をしたいと考えている方にとって、インターネットの利用と併せてとても心強い環境と言えるかもしれません。
前回は、開業費の範囲についてお伝えしましたが、今回は、開業前に支払った費用の続きとして【開業費は節税に繋がるかどうか】という別の視点から確認したいと思います。
まず【開業費】と検索すると、大半のサイトで【~も開業費にできるんです】や【開業費で節税】のような記述が見受けられます。この点、発信者側の意図は分からないので一概に否定することはできないのですが、受け取る方によっては【開業費にすれば節税できると勘違い】するのではないかと心配してしまいます。
そして、勝手と思いながら、前回お伝えした開業費の範囲という細かな点(でも本当は論点と思っています)の見落としについて、次のように考えてみました。
→自分で確定申告をするには、帳簿を作成しなければならない
→自分で帳簿を作成したいが、簿記の知識に自信がなくても市販の会計ソフトなら簡単そうだ
→でも、実際に使ってみたら勘定科目が分からない
→できれば今すぐ答えが欲しいが、相談する相手は身近にいない
→インターネットで検索してみたら【~は開業費でいい】や【節税】という記述がある
→念のため【~は開業費でいい】や【節税】という記述を【複数のサイト】で確認する
→複数のサイトの記述=多数意見が後押しになり【開業費にすれば節税できると解釈】してしまう
→結果、開業費から除かれる支出まで開業費勘定残高を構成することになってしまう
です・・・。仮に、答えを求めようとする側にこのような心理が作用していたとしたならば不本意だなと思いつつも、インターネットと市販会計ソフトの普及という背景から、このようなケースは意外に多いと感じています。ご自身は如何でしょうか。
さて、開業費は節税に繋がるかどうかについて・・・、
[開業費勘定の費用化(=償却)のタイミング]により節税に繋げることは可能ですが、
開業費勘定で処理すれば[節税できると勘違いしないように]気を付けて頂きたいとお伝えします。そもそも、開業費に関連して節税に繋げようとするならば、その支出は開業費なのかどうかの判断がスタートであり、論点と言えます。開業費勘定で[処理するか]ではなく[処理できるか]をお考え下さい。
ところで、開業費勘定で[処理できない]からと言って、
開業費勘定で[処理できなかった費用は経費にならない]ということではありません。
前回のコラムでもお伝えしましたが、原則どおり、消耗品費や旅費交通費、減価償却資産勘定など適正な勘定科目で処理して、堂々と必要経費に計上して下さい。特に、あれもダメこれもダメと言われてしまうとそのまま勘違いしそうなところですので、この点は混同しないように気を付けて頂きたいと思います。そして、開業費勘定で処理すべきものについては【開業費勘定の費用化(=償却)のタイミング】がまさに節税に繋がるわけですが、前述の勘違いしてしまうカラクリを含めて、またの機会にお伝えしようと思います。
<参考>所得税法第50条、所得税法施行令第137条