コラム[cf.]
開業前に色々と準備しました【所得税】
今やインターネットで色々と手軽に検索できることから、このタイトルをみて開業費のことだと気づく方は多いと思います。そこで、今回は【その支出は開業費に含まれるのか】を確認したいと思います。
例えば、自分の店をもって飲食店を始めたい方。オープンまでにはやるべきことは沢山あると思いますが、お店の食器類やテーブル・椅子などの購入もその一つでしょう。タイミング的には開業前に支払った費用と言えますが、これらの購入費用は開業費になるのでしょうか。
結論は、開業費になりません。仕訳例としては、日付は開業日で、勘定科目は消耗品費や減価償却資産で、摘要欄には実際の支払い日とその内容を記入する方法が妥当と言えます。結果的に【開業後に購入した場合と特に違いはなく】、仮に個々の金額が10万円未満であれば消耗品費で処理されることから【開業年分の消耗品費勘定は多額になる】こともあるでしょう。
開業費は繰延資産の一つですが、そもそも繰延資産とは、支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものであり、このうち開業費とは、
①~・・・事業所得・・・~を生ずべき事業を開始するまでの間に、開業準備のために【特別に支出する費用】であり、
②【資産の取得に要した金額とされるべき費用および前払費用を除く】
と、定義しています。食器類やテーブル・椅子などは、まさに資産の取得に要した金額であり、開業費からは除かれるのです。
さて、現時点のご自身の帳簿を確認してみて下さい。開業前という時期的な判断のみで開業費勘定で処理していた場合は、きっと、開業費勘定の残高が多額になっていることと思います。これから起業を考えている方と起業されて間もない方はまだ間に合います。もう既に申告をしてしまった方は放置するのだけはやめましょう。何とかなるかもしれません・・・。開業前に支払った費用のうち開業費勘定で処理できるものとは、
開業前に支払ったかどうかという[単に時期的なことだけ]で判断するのではなく、
資産の取得や前払費用を除く特別な支出のうち[個々の支出の内容に応じて]判断すべきものなのです。
因みに、開業前に支払った建物賃借契約に係る契約金、パソコンや専門書の購入費用、年払いの会費、内装工事費、商品や材料の仕入れ代金なども開業費からは除かれて、個々の内容に応じた勘定科目で処理することになります。
ところで、何故このような細かな点(でも本当は論点となりますが)を見落としてしまうのかとても気になったので、敢えて検索してみました。様々な記述というよりは目を引くような記述が多く、なるほど・・・何となくわかったような気がします。
<参考>所得税法第2条第1項第20号、所得税法施行令第7条第1項第1号